Re.あわ文化 第78回夏期阿波人形浄瑠璃大会

阿波踊りと並んで徳島県を代表する伝統文化である人形浄瑠璃。第78回夏期阿波人形浄瑠璃大会が、7月20日(土)21日(日)、あわぎんホール(徳島県郷土文化会館)で賑々しく執り行われました。担い手の減少、後継者不足が叫ばれているとは言え、両日にわたり数々の人形座と太夫座が競演を重ねている事実に感動を覚えるばかりです。

長い歴史を有する阿波人形浄瑠璃大会を、(公財)阿波人形浄瑠璃振興会と共に主催するあわぎんホール((公財)徳島県文化振興財団)としては、伝承へのモチベーションに繋げていただくべく、異ジャンルのプロフェッショナルを起用した様々な企画を、人形浄瑠璃上演の合間に挿入するなどして大会の活性化を図っています。

この数年そのお手伝いを承っていて、前回・前々回は義太夫節の音楽面に着目した企画でご好評をいただきました、今回は浄瑠璃=義太夫節の「語り」に着目。浄瑠璃は「三味線と共に物語を伝える芸能」であり、もちろん「語り芸」の一つですが、琵琶法師が『平家物語』を語り伝えたように、日本には古くから「語り芸(話芸・舌耕芸…)」というジャンルが広く、根強く人々に愛されてきた歴史があります。そこで、義太夫節と他の話芸(講談・落語・浪曲)の比較を基軸にした企画として、現在一線で活躍中の講談師・田辺銀冶さん、落語家・立川晴の輔さん、浪曲師・玉川奈々福さん(曲師・広沢美舟さん)をお招きし、各話芸を楽しんでいただきました。その後は「語り芸トーク」題し、ホスト役として浄瑠璃の地元太夫・竹本友和嘉さんに司会進行をお引き受けいただき、銀冶さん、晴の輔さん、奈々福さんと共に、それぞれが携わる話芸の特徴と聴き処などをお話しいただき、「想像力を刺激し、人々の心を豊かに、そして元気にする語り芸の素晴らしさ」について大いに語り合っていただきました。大盛り上がりの実に楽しい時間でした。お客さまからも「時間が足りない!もっと聴きたかった!」との声を多々伺いましたが、こうした試みを通して、徳島の方々が浄瑠璃の価値と楽しさを再認識していただく方向に少しでもお役に立てれば本望です。

能・狂言、歌舞伎と並んで日本を代表する伝統芸能である人形浄瑠璃が「郷土芸能」としてイキイキと伝承されていること自体、奇跡的なことと思っています。担い手がプロフェッショナルである劇場系伝統芸能と、担い手が地域の方々である郷土芸能はそもそも継承の基盤が異なるため、一絡げに括ることはできません。特に地域独自に伝承されてきた郷土芸能に“中央で活躍する”プロが指導者として参加すると、芸自体は向上するものの、同時に芸の地域的特色を保つことは難しくなります。だからこそ地域の人々の中で継承してゆくことに深い意味があるのですが、徳島はこの一線を踏ん張っておられることに大きな共感を抱かざるを得ません。

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